大人のサンデーレーサー

2006年だったでしょうか?11月に恒例で開催されている世界最大のオートバイの見本市EICMA(ミラノショー)に展示されていたプロトタイプのエンジンに私はとても驚きました。450㏄Vツインのコンパクトなそれは、常識を覆すほどのコンパクトさで、2気筒でありながら単気筒と同等のサイズと重量で設計されているようでした。
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きっと世界中の好き物が、このエンジンを積んだライトウェイトロードスポーツに強い期待を抱いたことは間違いないと思います。
その中の1人が私です。
その後そのエンジンを積み、排気量をスケールアップした「アプリリアSXV550」がデビュー!
そして私達の「インディーズ・ヌーベルバーグ550h」の製作プロジェクトの始まりです。
基本コンセプトは「大人のサンデーレーサー」
ここに込めた想いは、安全に速く走れること。

目標は乾燥重量110㎏

昨今のリッタースーパースポーツはあまりに高性能高出力になりすぎたので、私達の年代の者たちが趣味でレースをするにはあまりに持て余しすぎることとなり、その結果本当の楽しさを見失ったり、老化?による対応力不足がよくない結果を作ったりしてしまう可能性が高くなると思います。
ヨーロッパでも人気の高いDUCATIの2バルブクラスもそんな理由もあって人気なのではないかと思います。100馬力超えると結構大変!
このSXV550のパワーユニットはフルパワー仕様にすると後輪で70PS近く発揮する素晴らしいエンジンです。これに超軽量でエアロダイナミクスな車体を組み合わせれば結構上級クラスの車種と同等の走りを楽しめるのではないかと考えました。
完成車の目標は乾燥重量110㎏!に収めることが目標となりました。
軽量なモタード車であるSXVも実測してみると約145㎏でしたので簡単には目標は達成できそうにありません。

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軽さの目標と共に課題のエアロダイナミクスですが、当然風洞実験室などありませんので現実的なところでまず全面投影面積を徹底的に小さくすることがデザインの上で非常に重要なポイントとなります。
そしてもう一つ重要なコンセプトが、減速からターンインにかけての、もっとも運動神経とキャリアと勇気?が問われる部分をバイク自身がどれだけカバーできるか。大人のレーサーとして、安心してコーナリング出来ることは同じリスクなら速く走れることになり、レーサーとしては速く走ることを無視して考えることは出来ません。
そんなコンセプトをまとめ上げながら車両を作り上げていきます。
ネーミングは当社のオリジナルパーツ「ヌーベルバーグ」新しい波!として新しい革新的な発想で自分を含めた感動の新しい提案をインディーズから!の想いをこめました。
そしてネーミングの最後のhは共にこのプロジェクトを進めた半田良和さんから一文字いただきました。

減速からターンイン

減速からターンインの新しい試みで、フロントサスペンションに独自の工夫を凝らしました。
フレーム自身はレースのレギュレーションの都合で変更しない方向でしたので、元々ステアリングヘッドが高い位置にあるモタード車であるSXVはアライメントをロード寄りに振ったところで、納得のいく軽量を生かしたクイックなターンインは望めないであろうとの見込みからアプローチを変更して、減速でノーズダイブをある程度コントロールしながらリアタイヤへの加重移動もイージーにすることと、ブレーキング荷重が掛った時にテレスコピックでは弱点の作動性の悪化を押さえ、よく動く状態を維持するために、今回はスイングアームを使ったサスペンション形式にすることに決定しました。この結果非常に安定したブレーキングの姿勢と、圧倒的なグリップ感を感じながらコーナーに倒れこんでいくフィーリングを実現しました。ストロークは120ミリで設計を始めましたが、結局最終107ミリとなりましたが必要十分の作動感を実現しています。
リンク形式により、ストローク状態でのサスペンションユニットの作動状況を計算出来たために思った以上の成果を短期で実現しました。
従来のフロントフォークはスライダーとしての役目と剛性維持を受け持ちますが、中身はすっからかん?半田さんのアイデアで潤滑用のオイルが極少量入るだけに設計変更出来たために、ノーマルのカートリッジシステム排除とオイル量減少が、スイングアームユニットによる重量増を相殺して、実質軽量化にも貢献することになりました。
アームとホイール部分の支点を私はエキセントリックでさらに緻密に制御できるように提案しましたが半田さんの意見を尊重してシンプルなボールジョイントとしました。
現物を見てみるとフロントもリアサスのような構成で独特です。このような構成が可能であったのも先の高いステアリングヘッドのために、サスペンションユニットを設置するスペースが確保出来てこそ可能となったことです。さまざまな標準部分を不利と考えず有利に生かそうとの2人の考えがよい感じで進みます。