大人のサンデーレーサー(後編)

このフロントサス以外のもう一つのチャレンジは冷却です。
先のコンセプトでもあったように、小さい前面投影面積を実現させるためにラジエターは基本リアに置くことを決めていました。フロントにスイングアームがある構成のために小さな補助ラジエターしか前には付けられません。容量を満たそうとすると前面投影が大きくなり本来の目的が…実はこのクーリングに関してはとことん苦しみました。
最初はこのリアに置くラジエターをハイブリッドクーリングで冷やそうとの決意で取り組んでいました。ハイブリッドクーリング?勝手に呼んでいますが、エアダクトの張り出しも最小限にしたかったために自然に流れる部分の他に違う力で熱気を引き出せないか?
そんな考えから、排気で熱気を引っ張り出す!もっとわかりやすく言えば排気が発生する負圧をラジエターの熱気の抜き出しに一部利用出来ないかと考えチャレンジしました。
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しかし…これはなかなか難しかった。何度もアイデアを出し合い、パーツを作り、テストをする。繰り返し行いながら少しずつ前に進んでいましたが、このペースでいくと、走ることは可能でも、性能を発揮するレベルまで温度を下げることはかなりハードルが高いとの辛い決断で、あっさりこのシステムを捨てて効率の良い前面からの冷気導入に踏み切りました。
サイドにエアダクトを追加しなくてはならなっかたために、最初からこだわっていたハーフカウルの下から覗く美しいV-TWINエンジンを見せるデザインは諦めなければならず、
最終的にアッパーカウル前面に大穴も開けなければ数字を達成出来ませんでした。が個性的な顔つきとなりました。

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マフラーも刷新して超軽量の連結無しのMOTO-GP風メガフォンで高回転の伸びを狙いました。リア周りもすっきりしましたが、若干バイクが小さく見えるので私が乗るとちょっとバランスが悪いかな?
そして最終仕上げのデザインと空力のバランスもじっくり練りこみました。
タンク自身は圧倒的にスリムにしてニーグリップ状態で膝の部分の抵抗を最小限しながらレースで必要な10リッター前後の容量を確保、その上にかぶさるタンクカバーはコーナリング中にはしっかりと加重の調整が可能になるように美しさと機能のバランスを求めてクレイモデル用の粘土を何度も削り直しながらデザインしていきました。
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最終的に、先にも書いたオフ車特有のステアリングヘッドの高さでなかなかこの手のバイクのシルエットの難しいサイドビューをある程度納得のいく形に仕上げられたと思います(かっこいいでしょ?)
機能的にもタンクカバー形状は十分役割を果たすように機能の中で必然に導かれる形状となりました。
リアサスペンションも昨今のサスペンションユニット自身の進化に任せて、軽量化と、クランクケース後方のスペースをエキゾーストパイプの有効な通路とするためにレイダウンしてダイレクトにマウント。大幅な軽量化とともに、ロードレーサーとしてスイングアームの剛性アップも果たします。
カートランドでの簡単なシェイクダウンを済ませて、スイングアームのさらなる剛性不足を大幅な補強でバランスさせ、タイヤサイズもF110→120にリアは現在も模索中。テストしながら、コーナーリングターンインの後の前後のリーンフィーリングとスロットルオンの後の2次旋回の引き出しに小改良を進めていきます。

岡山国際でシェイクダウン

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ライダースクラブ2011年3月号P88
ライダースクラブ編集部の方々にも試乗いただきながら細かなレーサーとしての可能性を確認していきました。
本格走行は初めてにもかかわらず、高評価を頂き、自分自身もイメージに近い走りをこのような段階で感じられるとは夢にも思っておらず、今後が非常に楽しみなシェイクダウンとなりました。
ライダースさんからも、「コンセプトのターンインの安定感は異次元」とのコメントもいただき、今後はアクセルオフからオンへの切り替えが元々シビアなこのエンジンの悪癖を、スロットルが位相で開くスペシャルパーツに換装することで緩和して、その時のリヤサスペンションのアンチスクワット方向に動きすぎる現状をサスペンション自身とセッティングで押さえて行くように持って行けば、本来からの狙いである、軽量マシンならではのハイスピードな旋回を入口から出口まで楽しく出来るはずと確信しました。
小さな欲を言えば、小型ハイパワー、ハイレスポンスとはいえこのエンジンは元々オフ車用の中速型エンジンですので、やはりロードレーサーとしては高回転域のメリハリがあった方が有利であり、何よりライダーが燃える!?結構サンデーレーサーとしては重要な部分ではないかと、現在はハイカムの組み込みと、フルコンでのマネージメントを次の課題と考え構想中です。
そして最終目的は半田さんとも確認しあっていましたが、このマシンを公道仕様で量産することでした。

世界で一番私の乗りたいバイク

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しかしこのような素晴らしい私達夢も半田良和さんが、がんにより帰らぬ人となったことにより一旦ストップとなりました。
お互いに夢を持って作り上げたバイクがシェイクダウンを済ませてすぐの出来事でした。
次はオリジナルフレームマシンを作ろうと語り合ったりしていたのですが…
このバイクが半田さんの遺作となってしまいましたが、そのアイデアと経験が詰まったこのマシンを大切に成熟させて、その想いを後継のメカニックに繋げる役割を必ず果たしてくれると信じています。あらためて半田さんにお礼と感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
今回の製作を次のステップに!
インディーズヌーベルバーグ550h!は当社のハイパワーモータースポーツへのアンチテーゼであり、
何より「世界で一番私の乗りたいバイク」であります。

インディーズ代表 山口裕治